目次
はじめに:「働きたい」という思いに寄り添って
「障がいがあっても働けるのだろうか?」
この問いかけは、就労を希望される方やそのご家族、支援者の方々から私たちが日々いただく切実な相談です。一般就労は難しいと感じていても、「社会に参加したい」「自分の力を試したい」「誰かの役に立ちたい」という思いは、障がいの有無に関わらず、誰もが持つ自然な願いです。
広島市安佐北区深川に拠点を置く株式会社アイオライトが運営する「まごころの家」では、「全ての人々の未来を創造し、社会で輝ける環境、社会を造り上げる」という理念のもと、その思いを大切にしながら、一人ひとりの可能性を引き出す場を提供しています。
私たちは、障がいや難病を抱える方々の「働きたい」という前向きな気持ちを何より大切にしています。この想いこそが、利用者の皆さんが持つ最も貴重な原動力であると考えているからです。単に作業を提供するのではなく、一人ひとりの「働きたい」という気持ちに寄り添い、その想いを実現できる環境づくりに全力で取り組んでいます。
本記事では、まごころの家倉掛とまごころの家若草で展開している就労継続支援B型事業所での実際の作業現場の様子や、軽作業がどのように自信や社会参加へとつながっていくのか、そして私たちが大切にしている支援の考え方について詳しくご紹介します。
実際の作業現場から見える「働く喜び」
多様な軽作業プログラムの展開
まごころの家では、障がいや難病を抱える方が安心して取り組める軽作業を中心に就労訓練を行っています。私たちが提供する作業は、単なる時間つぶしではなく、将来につながる本格的な就労訓練として設計されています。
実際に行われている作業には以下のようなものがあります:
製品加工・組み立て作業
- 商品の袋詰めやシール貼り
- 簡単な部品の組み立て作業
- 梱包や検品作業
- 製品の仕分けや分類作業
事務補助作業
- 書類の整理や仕分け
- 封入作業
施設外作業
- 食品製造施設内の片づけ・清掃活動
- 仕出し弁当詰め合わせ作業
これらの作業は、実際の職場で求められるスキルや知識を身につけることを目的とした、実践性の高いプログラムです。作業を通じて、集中力、継続力、協調性といった働く上で欠かせない基礎能力を自然に育むことができます。
現場の雰囲気と利用者の声
まごころの家の作業現場は、明るく温かい雰囲気に包まれています。スタッフが常に利用者のペースに合わせてサポートし、無理なく作業に取り組める環境を整えています。一つひとつの作業に丁寧に取り組むことで、技術的なスキルはもちろん、責任感や達成感も同時に養われていきます。
実際に参加されている方からは、次のような声が寄せられています:
「最初は不安でしたが、自分にもできることがあるとわかり、通うのが楽しみになりました。スタッフの方々が優しく教えてくれるので、安心して作業に取り組めます」(30代男性)
「作業を終えた後に『ありがとう』と言ってもらえることが嬉しいです。自分が作ったものが誰かの役に立っていると思うと、やりがいを感じます」(40代女性)
「ここに来てから、毎日に張り合いが出てきました。仲間と一緒に作業することで、人との関わりも増えて、生活が充実しています」(50代男性)
「今日も来てよかった」「やりがいを感じられた」と思えるような、心に響く支援を心がけている私たちにとって、こうした利用者の声は何よりの励みとなっています。
軽作業が持つ大きな意味:社会参加への確かな一歩
成功体験の積み重ねがもたらす変化
一見すると単純に思える軽作業ですが、そこには利用者の方々にとって大きな意味があります。私たちが大切にしているのは、利用者の方々が作業の中で「できた」「上達した」という小さな成功体験を積み重ねることです。この体験の積み重ねが、自信につながり、さらなる能力向上への意欲を生み出します。
軽作業を通じて得られる効果を整理すると:
技能面での成長
- 手先の器用さや正確性の向上
- 作業手順の理解と実行能力の向上
- 品質への意識の醸成
- 時間管理能力の向上
精神面での成長
- 達成感による自己肯定感の向上
- 継続することの大切さの実感
- 困難を乗り越える力の獲得
- 前向きな気持ちの維持と強化
社会性の向上
- チームワークの経験
- コミュニケーション能力の向上
- 社会のルールやマナーの習得
- 責任感の醸成
「社会の一員」としての実感
まごころの家で行う作業は、実際に企業から受注したものが多く、完成品は市場に流通し、誰かの役に立っています。この「自分の作業が社会につながっている」という実感は、利用者の方々にとって大きな喜びとなっています。
作業を通じて、利用者の方々は次のような変化を見せています:
- 自信の回復と向上:「自分にもできることがある」という実感が、失いかけていた自信を取り戻すきっかけとなります。
- 生活リズムの確立:定期的に通所し、作業に取り組むことで、規則正しい生活リズムが身につきます。
- 社会とのつながりの実感:仲間と共に作業し、完成品が社会で使われることで、孤立感から解放され、社会の一員としての実感を得られます。
- 将来への希望:小さな成功体験の積み重ねが、「もっとできるようになりたい」「次のステップに挑戦したい」という前向きな気持ちを育みます。
まごころの家が実践する「個別性を重視した丁寧な対応」
一人ひとりに寄り添う支援体制
まごころの家では、利用者お一人おひとりを大切な「社会の一員」として認識し、それぞれの個性や状況に深く寄り添った支援を行っています。画一的なサービスではなく、その方だけの特別なサポートを提供することで、真の社会参加を実現しています。
障がいや難病の種類、程度、生活環境は人それぞれ異なります。だからこそ、私たちは利用者の方々との対話を重ね、その方が抱える課題や目標、そして可能性を丁寧に理解することから始めます。
個別支援計画の作成と実施
- 初回面談での丁寧なアセスメント
- 本人の希望や目標の明確化
- 段階的な目標設定(スモールステップ)
- 定期的な振り返りと計画の見直し
柔軟な作業環境の提供
- 体調や特性に応じた作業内容の調整
- 作業時間や休憩時間の個別設定
- 必要に応じた補助具の活用
- 静かな環境や個別スペースの確保
多職種連携による総合的なサポート
私たちは、医療や福祉機関との連携も大切にし、多角的な視点から最適な支援方法を見つけ出しています。約60名の従業員が一丸となって、利用者の方々を支えています。
連携体制の構築
- 主治医や医療機関との情報共有
- 相談支援専門員との定期的な連携
- ご家族との密な連絡体制
- 地域の社会資源の活用
この連携により、利用者の方々が単に作業をこなすだけでなく、自分自身の成長を実感し、社会の中での自分の役割や価値を見出すことができる、そんな深みのある支援を提供し続けています。
実践的な就労訓練プログラムの詳細
段階的なスキルアップシステム
まごころの家では、利用者の方々が無理なく着実にステップアップできるよう、段階的な訓練プログラムを用意しています。
初級段階:基礎力の養成
- 簡単な作業から始める
- 作業の基本動作の習得
- 集中力の維持訓練
- 基本的な報告・連絡・相談の練習
中級段階:応用力の向上
- 複数の作業工程の習得
- 作業効率の向上
- 品質管理の意識づけ
- チーム作業への参加
上級段階:実践力の強化
- リーダー役の経験
- 新人への指導補助
- 作業改善の提案
- より複雑な作業への挑戦
訓練は決して一方的なものではありません。利用者一人ひとりのペースや特性に合わせて柔軟に調整し、働く喜びを実感しながら、確実に知識と能力を向上させることができます。
社会で求められるスキルの習得
作業訓練を通じて、実際の職場で求められる様々なスキルを身につけることができます:
基本的な職業スキル
- 時間を守る習慣
- 身だしなみを整える意識
- 挨拶やマナーの実践
- 指示を理解し実行する力
コミュニケーションスキル
- 報告・連絡・相談の実践
- チームでの協働
- 適切な質問の仕方
- 感謝の気持ちを伝える力
問題解決スキル
- 困ったときの対処法
- ミスをした時の報告と改善
- 効率的な作業方法の工夫
- ストレス対処法の習得
広島の地域に根ざした支援ネットワーク
4つのエリアでの展開
株式会社アイオライトは、広島市内の倉掛・高陽・可部・若草・宇品の5エリアで事業を展開しています。就労継続支援B型事業所は、まごころの家倉掛とまごころの家若草の2か所で運営しており、地域の特性やニーズに応じた支援を提供しています。
また、放課後等デイサービス(まごころの家高陽、まごころの家倉掛、まごころの家可部、まごころの家りはす)、生活介護(まごころの家倉掛)、短期入所(まごころの家高陽)など、多様なサービスを展開することで、利用者の方々のライフステージや状況に応じた切れ目のない支援を実現しています。
地域企業との協力関係
地域の企業から作業を受注することで、利用者の方々に実際の仕事を体験していただく機会を提供しています。企業の皆様にも、障がい者雇用への理解を深めていただく機会となっており、地域全体で「誰もが働ける社会」の実現を目指しています。
利用者の方々の前向きな変化:希望へとつながる道のり
ある利用者Aさんの事例
発達障がいのあるAさん(20代)は、一般就労での失敗経験から自信を失い、家に引きこもりがちでした。まごころの家に通い始めた当初は、人と話すことも苦手で、作業にも消極的でした。
しかし、スタッフが根気強く寄り添い、Aさんのペースで作業に取り組める環境を整えました。最初は1日2時間の作業から始め、徐々に時間を延ばしていきました。得意な細かい作業を見つけ、その分野で力を発揮するようになると、自然と表情も明るくなっていきました。
現在では、週5日通所し、後輩の指導も行えるようになりました。「ここで働けることが自信になった。いつか一般就労にも挑戦したい」と語るAさんの姿に、私たちも大きな喜びを感じています。
家族の声から見える変化
利用者のご家族からも、多くの喜びの声をいただいています:
「子どもが毎朝『今日も頑張ってくる』と言って出かけていく姿を見ると、親として本当に嬉しいです。まごころの家に通うようになってから、表情が明るくなり、家での会話も増えました」
「働くことは無理だと諦めていましたが、スタッフの方々の温かいサポートのおかげで、本人も私たち家族も希望を持てるようになりました」
おわりに:一歩踏み出す勇気を応援します
「障がいがあっても働ける」という実感は、机上の理論ではなく、実際に現場での経験を通じてこそ得られるものです。まごころの家では、利用者が小さな一歩を積み重ねることで、やがて「働く喜び」や「社会に参加している自信」を実感できるようになります。
私たちは、障がいの有無に関わらず、誰もが持つ「社会に貢献したい」「自分らしく輝きたい」という普遍的な願いを大切にしています。その想いを形にするために、利用者の方々と一緒に歩み、共に成長し、働ける喜びを分かち合える場所として、まごころの家は存在しています。
前向きな気持ちを持続し、さらに育むことで、利用者の皆さんが自信と誇りを持って毎日を過ごせるよう、温かく、そして力強くサポートしています。一人ひとりが持つ固有の価値と尊厳を認め、その方らしい働き方や社会との関わり方を一緒に探求していきます。
もし、「自分にできることがあるのか不安」「働きたいけど、どう始めればいいかわからない」と感じている方がいらっしゃれば、ぜひ一度ご相談ください。見学や体験利用も随時受け付けています。
あなたの「働きたい」という思いを、私たちと一緒に形にしていきましょう。まごころの家は、全ての人々の未来を創造し、社会で輝ける環境を造り上げるために、これからも地域と共に歩み続けます。
