季節の変わり目に注意!体調管理と心のケア
秋は心と体がゆらぎやすい季節
季節の変わり目、特に夏から秋にかけては、気温や湿度、日照時間の変化により、自律神経が乱れやすくなる時期です。朝晩の寒暖差が10度以上になることも珍しくない広島では、体温調節機能に大きな負担がかかります。こうした変化は、私たちの体調だけでなく、心にも大きな影響を与えます。
株式会社アイオライトが運営する「まごころの家」では、広島市内の4エリア(高陽、倉掛、可部、宇品)で放課後等デイサービスを展開し、6歳から18歳の児童の皆様をお預かりしています。日々の支援の中で、季節の変わり目における利用者様の変化を細かく観察し、一人ひとりに合わせた対応を心がけています。
「なんとなくだるそう」「朝起きるのがつらそう」「イライラしたり落ち込んだりすることが増えた」――そんな様子が見られたら、それは秋特有のゆらぎかもしれません。特に、発達特性をお持ちのお子様や、障がいのある方々は、環境の変化に敏感に反応しやすく、普段以上に配慮が必要な時期といえるでしょう。
私たちは「全ての人々の未来を創造し、社会で輝ける環境、社会を造り上げる」という理念のもと、利用者様一人ひとりの特性や状況に深く寄り添った支援を行っています。今回は、現場での実践経験を基に、秋に気をつけたい体調管理と心のケアの方法を詳しくお伝えします。
自律神経の乱れがもたらす影響
自律神経とは何か
自律神経は、私たちの体温調整や消化、睡眠リズム、心の安定などを無意識にコントロールする大切な神経です。交感神経と副交感神経のバランスによって、活動と休息のリズムを作り出しています。しかし、秋になると以下のような要因でこのバランスが崩れやすくなります。
主な要因:
- 朝晩の急激な寒暖差(体温調整の負担増大)
- 湿度の低下による皮膚や粘膜の乾燥
- 日照時間の減少(セロトニン分泌の減少)
- 台風や秋雨前線による気圧の変動
- 夏の疲れの蓄積(いわゆる秋バテ)
これらの要因により、疲れやすさ、食欲不振、便秘、不眠、イライラ、落ち込みといった不調が現れやすくなります。成人でも体調管理が難しいこの時期、発達特性や感覚過敏のあるお子様、持病のある方にとっては、より大きな負担となることがあります。
まごころの家での観察事例
「まごころの家」の各施設では、季節の変わり目における利用者様の変化を細かく記録し、スタッフ間で共有しています。例えば、以下のような変化が観察されています:
- 普段は元気に活動する児童が、秋になると午後の活動中に眠そうにする頻度が増える
- 感覚過敏のあるお子様が、気温差による衣服の調整に強いストレスを感じる
- 集中力が続きにくくなり、課題への取り組み時間が短くなる
- 友達との関わりでイライラすることが増える
これらの観察結果を基に、私たちは個別支援計画を季節に応じて柔軟に調整し、利用者様が無理なく過ごせる環境作りを行っています。
家庭でできる体調管理の工夫
1. 服装の調整と感覚への配慮
秋の服装選びは、単に寒暖差への対応だけでなく、感覚的な快適さも重要です。「まごころの家」では、以下のような工夫を実践しています:
重ね着の基本:
- 薄手のカーディガンやベストを活用し、こまめな体温調整を可能にする
- 肌触りの良い素材を選び、感覚過敏のあるお子様でも快適に過ごせるようにする
- レッグウォーマーや腹巻きなど、部分的な保温アイテムを活用する
感覚への配慮:
- タグや縫い目が気になるお子様には、タグを取り除いたり、裏返しに着用する方法を提案
- 締め付けが苦手な場合は、ゆったりとしたサイズ感の衣服を選択
- 素材の変化(夏物から秋物への移行)は段階的に行う
2. 食事の工夫と栄養バランス
秋は実りの季節であり、栄養豊富な食材が豊富に出回ります。「まごころの家」では、就労継続支援B型事業所(まごころの家倉掛・まごころの家若草)において、利用者様へ季節の食材を使った食事提供を行っています。
秋の食事のポイント:
免疫力を高める食材:
- 根菜類(れんこん、ごぼう、さつまいも):食物繊維が豊富で腸内環境を整える
- きのこ類(しいたけ、まいたけ、えのき):ビタミンDが豊富で免疫力向上に貢献
- 秋の果物(梨、柿、ぶどう):ビタミンCや抗酸化物質を含む
心の安定を支える栄養素:
- トリプトファン(大豆製品、乳製品、バナナ):セロトニンの材料となる
- ビタミンB群(豚肉、玄米、納豆):神経系の働きを正常に保つ
- オメガ3脂肪酸(青魚、くるみ):脳機能をサポート
温かい食事の重要性:
- 朝食に温かい味噌汁やスープを取り入れ、体を内側から温める
- 生姜や根菜を使った煮物で、体温上昇を促す
- 発酵食品(味噌、納豆、ヨーグルト)で腸内環境を整える
3. 睡眠リズムの確立
質の良い睡眠は、自律神経のバランスを整える最も重要な要素の一つです。「まごころの家」の短期入所(ショートステイ)サービス(まごころの家高陽・定員5名)では、利用者様の睡眠パターンを詳細に観察し、個別の睡眠支援を行っています。
睡眠改善のための実践的アプローチ:
- 就寝2時間前からスクリーンタイムを制限し、ブルーライトの影響を軽減
- 入浴は就寝1時間前を目安に、38〜40度のぬるめのお湯でリラックス
- 寝室の温度を20〜22度、湿度を50〜60%に保つ
気分の浮き沈みに寄り添うコミュニケーション
心理的サポートの重要性
秋は日照時間の減少により、セロトニンの分泌が減少し、気分が沈みやすくなる時期です。特に言葉で気持ちをうまく表現できない方や、ストレスを内にため込みやすい方にとって、周囲の気づきと適切な支援が極めて重要になります。
「まごころの家」では、利用者の前向きな気持ちを何より大切にしています。単に作業を提供するのではなく、一人ひとりの「働きたい」「活動したい」という気持ちに寄り添い、その想いを実現できる環境づくりに全力で取り組んでいます。
効果的な声かけの技術
共感から始めるコミュニケーション:
- 「今日は寒いね、一緒に温かくしようか」と、まず相手の感覚を認める
- 「秋になって日が短くなったね」と、環境の変化を共有する
- 「疲れているように見えるけど、大丈夫?」と、観察した変化を優しく伝える
休息の肯定と承認:
- 「元気がないときは、無理しなくていいよ」と休むことを許可する
- 「今日はゆっくりペースでいこう」と、個別のペースを尊重する
- 「調子が悪いときは遠慮なく言ってね」と、相談しやすい雰囲気を作る
小さな成功体験の積み重ね:
- 「できたね」「よく頑張ったね」と、些細な達成も認める
- 「昨日より集中できているね」と、成長を具体的に伝える
- 「あなたがいてくれて助かった」と、存在価値を感じられる言葉をかける
現場での取り組み事例
まごころの家での実践プログラム
「まごころの家」の各施設では、秋の変化に対応する様々なプログラムを実施しています。個別性を重視した丁寧な対応という私たちの強みを活かし、利用者様一人ひとりの特性に合わせた支援を展開しています。
まごころの家可部での取り組み:
- 朝の体操プログラムで体温調整機能を活性化
- アート活動を通じた感情表現の機会提供
- 音楽療法を取り入れたリラクゼーション
まごころの家高陽での実践:
- 季節の食材を使った調理体験プログラム
- 温かい飲み物を飲みながらのリラックスタイム
- 五感を刺激する自然体験活動(紅葉狩り、どんぐり拾いなど)
まごころの家倉掛(生活介護)での工夫:
- 入浴支援時の温度管理と保湿ケアの徹底
- リハビリテーション活動での運動量調整
- 個別相談時間の増設による心理的サポートの強化
スタッフ間の連携体制
私たちは約60名の職員が一丸となって、利用者様の変化を見守る体制を整えています。具体的には:
- 毎日の申し送りでの体調・気分チェック表の共有
- 月次のケース会議での個別支援計画の見直し
- 家族との定期的な連絡帳のやり取りと面談
- 医療機関や他の福祉サービスとの連携強化
就労継続支援B型での配慮
「まごころの家倉掛」と「まごころの家若草」で実施している就労継続支援B型事業では、実践的な就労訓練プログラムを提供しています。秋の時期は特に以下の点に配慮しています:
- 作業時間の柔軟な調整(体調に応じた休憩時間の確保)
- 作業環境の温度・湿度管理の徹底
- 集中力が保ちやすい作業内容への変更
- 達成感を感じやすい短期目標の設定
家族と事業所の連携の重要性
情報共有の仕組み
秋の変化に適切に対応するためには、家庭と事業所の密な連携が不可欠です。「まごころの家」では、以下のような情報共有の仕組みを構築しています:
日常的な情報交換:
- 連絡帳での毎日の様子の共有
- 送迎時の短時間面談での気づきの交換
- LINEやメールでの緊急連絡体制の確立
定期的な振り返り:
- 送迎時の保護者様からの聞き取り
- 最長6か月ごとの個別支援計画の見直し
家庭での観察ポイント
ご家族にお願いしたい観察ポイントを具体的にお伝えします:
身体面のチェック:
- 朝の起床時の様子(すっきり起きられているか)
- 食欲の変化(食事量、好みの変化)
- 排便リズムの変化
- 肌の乾燥や湿疹の有無
精神面の観察:
- 表情の変化(笑顔の頻度)
- 会話量の増減
- 興味関心の変化
- イライラや不安の表出頻度
行動面の変化:
- 活動量の増減
- 集中力の持続時間
- 友達や家族との関わり方
- 睡眠パターンの変化
地域資源の活用
広島市安佐北区を中心に展開する「まごころの家」では、地域の特性を活かした支援も行っています:
- 近隣の公園での自然観察活動
- 地域の農家と連携した収穫体験
- 地域のイベントへの参加による社会参加機会の創出
これらの活動を通じて、利用者様が地域社会の一員として認識され、自己肯定感を高められるよう支援しています。
まとめ|一人ひとりに寄り添う支援を
秋の訪れは美しい自然とともにやってきますが、その陰で心と体には様々な負担がかかることもあります。季節の変化に敏感な利用者の方々を支えるには、家庭と事業所の連携、そして日々の「ちょっとした気づき」が何よりも大切です。
株式会社アイオライトは、「全ての人々の未来を創造し、社会で輝ける環境、社会を造り上げる」という理念のもと、利用者様お一人おひとりが持つ固有の価値と尊厳を認め、その方らしい生き方を全力でサポートしています。
ご家庭で実践していただきたいポイント:
- 環境調整:朝晩の体温調整ができる服装の準備と、室内環境の整備
- 栄養管理:季節の野菜や発酵食品を取り入れた食事の工夫
- 休息の確保:無理せず休める雰囲気づくりと、質の良い睡眠環境の整備
- 観察と記録:小さな変化やサインを見逃さず、必要に応じて記録する
- コミュニケーション:共感的な声かけと、本人のペースを尊重した関わり
私たちは、障がいの有無に関わらず、誰もが持つ「社会に貢献したい」「自分らしく輝きたい」という普遍的な願いを大切にしています。その想いを形にするために、利用者の方々と一緒に歩み、共に成長し、働ける喜びや活動する楽しさを分かち合える場所として、「まごころの家」は存在しています。
気になることがあれば、どんな小さなことでも遠慮なくスタッフへご相談ください。私たちは、専門的な知識と豊富な経験を活かし、利用者様とご家族の不安や悩みに真摯に向き合います。株式会社アイオライトでは、皆様の安心と笑顔を支えるために、これからも全力でサポートを続けてまいります。
季節の変わり目は確かに大変な時期ですが、適切な対応と温かい支援があれば、必ず乗り越えることができます。私たちと一緒に、利用者様が自信と誇りを持って毎日を過ごせるよう、温かく、そして力強くサポートしていきましょう。