1. 『田中さんの一日』シリーズ〜就労継続支援B型で働くということ〜

田中さんの一日』シリーズ〜就労継続支援B型で働くということ〜

はじめに

「就労継続支援B型」という言葉を耳にしたとき、皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか?「作業中心の施設」「日中の活動場所」という認識を持たれる方も多いかもしれません。しかし、実際の現場では、もっと温かく、もっと人に寄り添った時間が流れています。

私たちまごころの家は、「全ての人々の未来を創造し、社会で輝ける環境、社会を造り上げる」という理念のもと、広島市内5つの拠点で障害福祉サービスを提供しています。今回は、まごころの家倉掛とまごころの家若草で展開している就労継続支援B型の現場から、利用者さんの一日を支援スタッフの視点で密着レポートいたします。

利用者さんの成長の瞬間、笑顔、そしてスタッフとしての関わり方を通じて、「ここで働くこと」「ここで支えること」の魅力を感じていただければと思います。


午前:心を込めた「おはようございます」から始まる一日

朝10時。まごころの家には、利用者さんが続々と到着されます。スタッフとして私が一番大切にしているのは、その日の第一声です。「おはようございます、田中さん!今日もよろしくお願いします」

この日、田中さん(仮名)は少し緊張気味に入室されました。先月から通所を始めたばかりで、まだ環境に慣れていない様子です。そんな田中さんに、私たちスタッフが笑顔で声をかけることで、表情がふっと和らぎます。

「今日は何の作業からスタートしましょうか?」と尋ねると、田中さんは小さく頷いて、「昨日の続きから…お願いします」と答えてくださいました。この瞬間が、その日一日のスタートライン。私たちは、利用者さんが「今日も来てよかった」と思えるような環境作りを心がけています。

朝の準備時間での細やかな配慮

朝の準備時間では、一人ひとりの体調やその日の調子を確認します。田中さんは体調管理が得意ではないため、「昨夜はよく眠れましたか?」「朝ごはんは食べてこられましたか?」といった声かけから始めます。

私たちスタッフは、利用者さんの小さな変化も見逃さないよう注意深く観察しています。いつもより元気がない、表情が硬い、歩き方がいつもと違う…そんな些細な変化も、その日の支援方法を決める大切な情報となります。


午前の作業:一人ひとりの「できた!」を大切に

この日の午前中は、軽作業の時間です。シール貼り、袋詰め、部品の組み立てなど、実際の企業から委託を受けた作業を通じて、働く力を育んでいきます。就労継続支援B型では、以下のような力を身につけることを目指しています:

  • 集中力の向上:決められた時間内で作業に取り組む
  • 協調性の習得:他の利用者さんやスタッフとの連携
  • 責任感の醸成:最後まで丁寧に取り組む姿勢
  • 達成感の積み重ね:「できた!」という成功体験

田中さんは、最初の頃は手が震えてうまくシールを貼ることができず、「自分には無理かもしれません」と不安を漏らされることがありました。そんなとき、私たちスタッフは決して急かすことはありません。田中さんの隣に座り、一緒に作業を進めます。

「大丈夫です、田中さんのペースで行きましょう」「今日はとても丁寧にできていますね」

そんな声かけを続けることで、田中さんの手が少しずつ動き出し、30分後には一人で作業を進められるようになりました。完成した製品を手にした田中さんの笑顔は、私たちスタッフにとっても何より嬉しい瞬間です。

個別性を重視した支援アプローチ

まごころの家では、利用者お一人おひとりを大切な「社会の一員」として認識し、それぞれの個性や状況に深く寄り添った支援を行っています。画一的なサービスではなく、その方だけの特別なサポートを提供することで、真の社会参加を実現しています。

田中さんの場合、集中力が長く続かないという特性があります。そのため、15分作業をしたら5分休憩を取る、というように個別のスケジュールを組んでいます。また、視覚的な情報処理が得意なため、作業手順を図解で示したマニュアルを作成しました。

こうした個別対応は、医療機関や相談支援事業所との連携により、多角的な視点から最適な支援方法を見つけ出しています。利用者さんが「ここでなら自分らしくいられる」と感じられるよう、細やかな心配りと温かい眼差しでサポートしています。


昼休憩:安心できる居場所としての時間

正午になると、お昼休憩の時間です。利用者さんにとってもスタッフにとっても、この時間は大切な交流の場となります。お弁当を広げながら、趣味の話や休日の出来事を語り合います。

田中さんは最初の頃、一人で静かに食事をされていました。しかし、私たちスタッフが「田中さんはお料理がお好きでしたよね?今度お気に入りのレシピを教えてください」と声をかけることで、少しずつ会話の輪に加わってくださるようになりました。

就労継続支援B型は「働く場所」であると同時に、「安心して居られる場所」でもあります。利用者さんが心を開いて、自分らしい時間を過ごせるよう、スタッフも一緒にリラックスした時間を共有します。

食事を通じたコミュニケーション

昼食時間は、利用者さんの様々な一面を知ることができる貴重な時間です。普段は口数の少ない田中さんも、好きな食べ物の話になると目を輝かせて話してくださいます。

「実は家で野菜を育てているんです」「母の手料理が一番美味しいです」

そんな何気ない会話から、田中さんの生活背景や価値観を理解し、午後の支援に活かしていきます。また、他の利用者さんとの自然な交流も生まれ、「今度、野菜の育て方を教えてください」といった会話も聞こえてきます。


午後:新たなチャレンジとステップアップ

午後1時から3時までは、午前の作業の続きや、新しい課題にチャレンジする時間です。田中さんは、スタッフのサポートを受けながら徐々に作業のスピードを上げ、品質も向上してきました。

この日、田中さんには新しい作業工程をお任せすることにしました。「少し難しいかもしれませんが、田中さんなら大丈夫だと思います。一緒にやってみましょう」

私たちスタッフの役割は「やらせる」ことではなく、その人のペースに合わせて一歩ずつ進められるよう寄り添うことです。新しい作業に戸惑う田中さんに、私は隣に座って手順を一緒に確認します。

最初はゆっくりでも、丁寧に取り組む田中さんの姿勢に、私たちスタッフも学ぶことがたくさんあります。30分後、田中さんが「できました!」と笑顔を見せる瞬間は、私たちにとっても大きな喜びです。

実践的な就労訓練プログラム

まごころの家では、単なる時間つぶしではなく、将来につながる本格的な就労訓練を提供しています。軽作業を通じて行う訓練は、実際の職場で求められるスキルや知識を身につけることを目的とした、実践性の高いプログラムです。

作業を通じて、集中力、継続力、協調性といった働く上で欠かせない基礎能力を自然に育むことができます。また、一つひとつの作業に丁寧に取り組むことで、技術的なスキルはもちろん、責任感や達成感も同時に養われていきます。

私たちが大切にしているのは、利用者の方々が作業の中で「できた」「上達した」という小さな成功体験を積み重ねることです。この体験の積み重ねが、自信につながり、さらなる能力向上への意欲を生み出します。


一日の終わりに:また明日も来たいと思える場所へ

午後3時。作業を終えた利用者さんをお見送りする時間がやってきました。「田中さん、今日もよく頑張りましたね!新しい作業もとても上手にできていました」「また明日もお待ちしています」

田中さんは少し照れながらも、嬉しそうに「ありがとうございました。明日もよろしくお願いします」と答えてくださいました。

帰る際の田中さんの表情は、朝とは全く違います。達成感と充実感に満ちた表情で、背筋もピンと伸びています。こうした変化を目の当たりにすることが、私たちスタッフにとって何よりのやりがいです。

利用者さんの成長を支える仕事の魅力

就労継続支援B型のスタッフとして働く魅力は、利用者さんの成長を間近で見守れることです。田中さんのように、最初は不安でいっぱいだった方が、少しずつ自信を取り戻し、笑顔で帰宅される姿を見ると、この仕事を選んで本当によかったと感じます。

また、利用者さんから教わることも多くあります。困難な状況でも前向きに取り組む姿勢、小さなことにも感謝する心、仲間を思いやる優しさ…。私たちスタッフも、利用者さんから多くのことを学ばせていただいています。


スタッフとして大切にしていること

利用者さんの前向きな気持ちを何より重視

まごころの家では、障がいや難病を抱える方々の「働きたい」「日中に活動をしたい」という前向きな気持ちを何より大切にしています。この想いこそが、利用者の皆さんが持つ最も貴重な原動力であると私たちは考えているからです。

単に作業を提供するのではなく、一人ひとりの「働きたい」という気持ちに寄り添い、その想いを実現できる環境づくりに全力で取り組んでいます。利用者の方が「今日も来てよかった」「やりがいを感じられた」と思えるような、心に響く支援を心がけています。

障がいの有無を超えた普遍的な願いを大切に

私たちは、障がいの有無に関わらず、誰もが持つ「社会に貢献したい」「自分らしく輝きたい」という普遍的な願いを大切にしています。その想いを形にするために、利用者の方々と一緒に歩み、共に成長し、働ける喜びを分かち合える場所として、まごころの家は存在しています。

前向きな気持ちを持続し、さらに育むことで、利用者の皆さんが自信と誇りを持って毎日を過ごせるよう、温かく、そして力強くサポートしています。


まごころの家で働くスタッフの声

新人スタッフの1日

私がまごころの家で働き始めて半年が経ちました。最初は「利用者さんとうまくコミュニケーションが取れるだろうか」「適切な支援ができるだろうか」と不安でいっぱいでした。

しかし、先輩スタッフの丁寧な指導と、利用者さんの温かい受け入れにより、今では毎日が充実しています。特に印象に残っているのは、田中さんのような利用者さんが少しずつ成長される姿を見守れることです。

働きやすい環境づくり

まごころの家では、スタッフ同士のチームワークも大切にしています。困ったときは先輩に相談でき、定期的な研修で知識を深めることもできます。利用者さんだけでなく、スタッフも成長できる環境が整っています。

また、利用者さん一人ひとりに合わせた支援方法を検討する際は、チーム全体で話し合い、最適なアプローチを見つけ出します。スタッフ間の連携が取れているからこそ、質の高い支援を提供できるのです。


まとめとご案内

就労継続支援B型という場は、単なる作業の場ではありません。利用者さんが安心して通い続けられる「居場所」であり、挑戦を重ねて成長できる「学びの場」でもあります。そして、この環境を支えているのは、支援スタッフ一人ひとりの温かさと専門性です。

「就労継続支援B型って、どんなところだろう?」と迷われている利用者さんやご家族の方、「誰かの成長を支える仕事に携わりたい」と思っている求職者の方。まごころの家では、以下のことを大切にしています:

利用者さんに対して

  • 一人ひとりの個性を尊重した個別支援
  • 「また来たい」と思える温かい居場所づくり
  • 実践的で意味のある就労訓練プログラム
  • 将来の社会参加に向けたステップアップ支援

スタッフに対して

  • 「ここで働いてよかった」と思える環境づくり
  • 継続的な研修による専門性の向上
  • チームワークを大切にした働きやすい職場
  • 利用者さんの成長を支える喜びとやりがい

私たちまごころの家は、広島市内の4つの拠点(倉掛・高陽・可部・宇品)で、放課後等デイサービス、生活介護、就労継続支援B型、短期入所といった様々な障害福祉サービスを提供しています。

「全ての人々の未来を創造し、社会で輝ける環境、社会を造り上げる」という理念のもと、利用者さんお一人おひとりの可能性を信じ、その方らしい生き方を支援しています。

ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度見学にお越しください。田中さんのような利用者さんの笑顔と、スタッフの温かい支援の様子を、実際にご覧いただければと思います。

皆様のお越しを、心よりお待ちしております。

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